組版とは? 本づくりに欠かせない技術を解説
「旅人にとっての宿(逆旅)のような、人生の休憩場所や分岐点をつくる」を理念として、制作・出版業を行う逆旅出版です。
本を作る過程で、欠かせない「組版」。
組版とは、本のページを作成する際に、文字や画像、図表などを配置し、読みやすく美しいレイアウトを作り上げる作業のことを指します。
この記事では、組版の意味や目的、具体的な作業内容などを解説します。本づくりに欠かせない組版の技術について、理解を深めていきましょう!
組版の目的は、読みやすく美しい本をつくること
組版の目的は、読者にとって読みやすく、内容が伝わりやすい本のページを作ることです。
そのために、文字の大きさや字間、行間などを調整し、見出しや本文、図表などを適切に配置します。
読みやすさを追求するだけでなく、本の内容に合った美しいデザインを施すことも、組版の重要な役割です。
- 本文の文字が読みやすい書体であること
- 見出しが適切な大きさで強調されていること
- 図表が見やすく配置されていること
こういった商業書籍では当たり前に感じる「読みやすさ」は、組版デザイナーの配慮によって実現されています。
また、組版では、ページ数の調整も行います。本文の文字数や図表の量に合わせて、ページ数を増減し、本全体のボリュームを調整するのです。
書籍の印刷はとても大きな印刷機と紙を使い、そこに数ページ分を印刷し、製本しています。そのため、全体のページ数によって印刷効率が変化し、原価や損益分岐点が変わります。
そこで組版デザイナーは、フォントの調節や、改ページ、空白のページの挿入などを行い、調節します。
美しいデザインとしての目線と、原価を意識する商業的な目線の、両方をもつのが組版デザイナーです。
組版の具体的な作業内容
それでは、組版の具体的な作業内容を見ていきましょう。
組版は、大きく分けて以下の手順で進められます。
- 本文の書体や文字サイズ、行間などを決める
- 見出しの書体や大きさ、配置を決める
- 図表の配置を決める
- ページ数を調整する
- 全体のレイアウトを調整する
まず、本文の書体や文字サイズ、行間などを決めます。
読みやすさを重視しつつ、本の内容に合った雰囲気の書体を選ぶことが大切です。 文字サイズは、本のサイズに応じて調整し、行間は文字サイズとのバランスを考えて設定します。
次に、見出しの書体や大きさ、配置を決めます。
見出しは、本文とは異なる書体を使うことで、強調することができます。 また、見出しの大きさを変えることで、章や節、項といった階層構造を表現できます。
図表の配置も、組版の重要な作業です。
図表は、本文の内容を補完したり、視覚的に説明したりする役割を果たします。 図表の配置は、本文との関連性を考慮しながら、見やすい位置に配置します。
これらの作業を進めながら、ページ数の調整も行います。
本文の文字数や図表の量に合わせて、ページ数を増減することで、本全体のボリュームを調整するのです。
最後に、全体のレイアウトを調整します。
各ページの要素が適切に配置されているか、全体的に見やすいレイアウトになっているかを確認し、必要に応じて微調整を行います。
こうした一連の作業により、読みやすく美しい本のページが作り上げられていくのです。
組版デザインの工夫で、本の魅力を高める
組版は、本文の文字や図表などを配置するだけでなく、本全体の印象を左右するデザイン作業でもあります。
組版デザインを工夫することで、フルカラーでなくても読みやすい本を作ることができますし、対象年齢に合わせた本の雰囲気を作り出すこともできるのです。
フルカラーでなくても読みやすくできる
フルカラーの本は、カラフルな色使いで視覚的な魅力があります。
しかし、フルカラー印刷はコストがかかります。モノクロ印刷であれば1色分で済むインクが、4色必要になるため、単純に考えてもインク代が4倍になるためです。
そのため、すべての本をフルカラーにするのは難しいのが現状です。
ですが組版デザインの工夫によっては、フルカラーでなくても読みやすく魅力的な本を作ることができます。
例えば、上記2枚の写真は弊社がだしている「埋まらないよ、そんな男じゃ。(著:yuzuka)」という一冊の書籍です。
こちらの書籍は黒+薄紫の2色刷りで作成しましたが、黒の割合を調節することで、印象的なデザインを1冊の中にちりばめました。
また、モノクロであっても本文の書体を工夫したりイラストを駆使したりすることで、洗練された印象を与えることもできます。
対象年齢に受け入れてもらいやすくなる
また、フォント選びやフォントサイズの選定は読者層に大きく影響します。
例えば、フォントサイズだけをとっても以下の通り。
- 標準(主に成人向け):8〜10ポイント
- 高校生向けの教科書:10.5〜14ポイント
- 小学校中学年から高学年向けの教科書:22ポイント前後
- 小学校低学年向けの教科書:26ポイント程度
これに加えて、子ども向けの本であれば賑やかで楽しい雰囲気のデザインが望ましいですし、大人向けの本であれば落ち着いた上品な印象のデザインが求められるでしょう。
こういった様々な要素を組み合わせながら組版デザインをすることで、対象年齢に合った本の雰囲気を作り出すことができ、読者に受け入れてもらいやすくなります。
読者が手に取りたくなる、読みたくなる本づくりが可能なのです。
プロの技術が生きる組版
組版は、本づくりに欠かせない重要な作業です。読者にとって読みやすく、内容が伝わりやすい本をつくるために、組版のプロは細部まで配慮しながら、ページをデザインしていきます。
私たち逆旅出版でも、経験豊富な組版のプロが、一冊一冊の本に心を込めて組版作業を行っています。 書籍の魅力が読者に伝わるよう、読みやすく美しい本づくりを目指しているのです。